競艇のフライングってなに?フライングをするとペナルティになると聞いたけど!詳しく教えてください!
任せて!
競艇に限らず、少しでも相手より早くスタートを切りたいと思うのは皆同じですから、レース競技にフライングはつきものです。
ただし、フライングがあればスタートをやり直すのが普通で、1回のフライングで失格、欠場扱いになってしまうのは多くの競技の中でも競艇だけです。
欠場になるだけでなく、他にも多くのペナルティがあり、競艇でフライングは重大な事故扱いなのです。特に大きなフライングは「非常識なフライング」と呼ばれ、以前は即日帰郷という厳しい処分がありました。
ただ、2022年5月に非常識なフライングの措置が変更になり、即日帰郷は無くなりました。ここではその内容についてもご説明します。
【2022年5月】非常識なフライングの措置が変更!
2022年5月にて非常識なフライングの措置が変更。2022年4月30日までは即日帰郷となりましたが、それが廃止され、5月1日以降からはスタート事故による出場辞退期間が5日間増えるようになりました。
フライング回数 | 4/30迄 | 5/1以降 | 合計 |
---|---|---|---|
1回 | 30日間 | 35日間 | – |
2回 | 60日間 | 65日間 | 100日間 |
3回 | 90日間 | 95日間 | 195日間 |
競艇のフライングとは
競艇のフライングとは、時計の針が0秒(12の位置)を指す前にスタートラインを通ってしまった事をフライングとしています。
これは競艇独自のルールをはじめに理解する必要があります。
ほとんどのレース競技はスタートラインから静止した状態で始まりますが、競艇のボートにはブレーキもクラッチもなく、スロットルを離していてもペラが回ってしまうため静止することができません。
そのため、スタートタイムに合わせて各艇が助走し、スタートラインを通過する独特のスタートとなっています。これを競艇では「フライングスタート方式」と呼びます。
はじめにフライングスタート方式を理解しよう
先ほど解説しましたように、競艇のボートは静止させることが出来ないので、競艇ではスタートタイムよりも早く艇を助走させ、タイムに合わせてスタートラインを通過するフライングスタートでレースが始まります。
ただし、風や潮の流れによって助走のスピードを読み違え、スタートタイムよりも少しでも早く通過してしまうとフライングになり、その選手は欠場扱いになってしまいます。
タイムは0.01秒単位で計測されるため、絶対にフライングは許されません。もし、0.05秒以上のフライングをすると「非常識なフライング」となり、通常のフライングより重いペナルティを受けることになります。
以前は即日帰郷という思いペナルティでしたが、2022年5月のルール改正で即日帰郷は無くなりましたが、フライング休みが5日間増えました。
フライングや出遅れをスタート事故(異常スタート)と言う
競艇のスタートはスタートタイムから1秒以内にラインを通過しなければなりません。
少しでも早く出てしまえばフライング、1秒以内にスタートラインを通過できなければ出遅れになり、フライングと同じ出遅れ欠場になってしまい、その選手絡みの舟券は全て払い戻しになってしまいます。
競艇ではそのようなことをスタート事故と呼んでいます。
実はF1・F2のほかに「F3」もある?
F1とはフライング1回、F2は2回という意味です。もし半年の期間中に3回フライングをすればF3ということになり、195日間のフライング休み(斡旋停止)になってしまいます。
3回すると斡旋辞退ということになるので、例外を除いてF3でレースに出ることはありませんが、出場予定を消化してからフライング休みに入るため、F2の選手がフライングをしてしまうとF3になります。
もし、4回してしまうと1年間レースに出られないので、事実上の引退勧告になってしまいます。
フライングした際のペナルティは5つ
フライングをするとファンはもちろん、主催者にも多大な迷惑をかけることになるので、当然選手にはペナルティが課せられます。ペナルティは大まかに5つあります。
それぞれ解説いたします。
フライング休み
フライング休みとは一定の期間斡旋が停止されることを言います。フライングする前から出場が予定されているレースには出場できますが、その後はフライング休みになり、その期間が終わるまで斡旋がありません。F2になってしまうと3か月斡旋がないので、その間は収入が無くなります。
フライング回数による休み期間
フライング回数 | 4/30迄 | 5/1以降 | 合計 |
---|---|---|---|
1回 | 30日間 | 35日間 | – |
2回 | 60日間 | 65日間 | 100日間 |
3回 | 90日間 | 95日間 | 195日間 |
2022年4月30日までは、1回のフライングで30日、2回目はプラス60日で90日、3回目になると更に90日がプラスされるため、180日間斡旋してもらえないことになりましたが、2022年5月より措置が変更となり、プラス5日間の休みが増えました。
A1の上位の選手ならば貯えもありますし、35日程度ならばいい休息の期間になりますが、等級が下位の選手は収入が無くなり、アルバイトをしなければ生活できない事態になってしまいます。
回数によっては「実質引退」となる
3回フライングをしてしまうと半年以上の休みになってしまうため、相当厳しい処分です。更に4回目となるとその倍になるので、「実質引退」ということになってしまいます。
SG・G1・G2の優勝戦と準優勝戦でフライングをした場合は斡旋辞退となる
グレードの高いレースの優勝戦や準優戦でフライングをしてしまうと特に重い罰則があります。
事故点が通常レースよりも重いうえ、一定期間これらのグレードレースに出られなくなります。中でもSGの決勝戦でフライングをしてしまうと1年間SGへ出場が出来なくなります。
ただし、賞金ランキング上位の選手については例外的に賞金王決定レースだけには出られるようになっています。
即日帰郷
同一節内に2度フライングをしたり、0.05秒を超える非常識なフライングをした者に課せられるペナルティで、その日のうちに荷物をまとめ、宿舎を出て帰らなくてはなりませんでした。
2022年5月に非常識なフライングの措置が変更になり、この即日帰郷は無くなりました!
非常識なフライング
スタートラインを0.05秒以上早く出てしまうフライングを「非常識なフライング」と呼びます。スタートタイムより0.05秒というとほんの少しと思うかもしれませんが、画像にしてみるとかなり大きなフライングということが分かります。
これまでは即日帰郷になりましたが、ルールが改正され、斡旋が停止されるフライング休みが5日間延びることになりました。そのため、賞典除外にはなりますが、その節のレースには最後まで出走できるようになりました。
事故点
フライングや出遅れなどのスタート事故を始め、反則行為や転覆などの事故には、選手に事故の点数が加算されていきます。
スタート事故は20点(優勝戦は30点)、反則行為は15点、選手責任の失格(転覆、エンストなど)は10点。その点の合計を出走数で割った数字が選手の事故点になります。
この点数が0.7を超えると、どんな選手でも期末にB2に降級されることになります。ただ、この事故点は年に2回、5月と11月にリセットされます。
スタートの再訓練
選手がフライングをしてしまった場合は、愛知県碧南市にある訓練所で2泊3日の研修を受けなければなりません。
これまではフライングしてから90走以内に再度フライングした場合や優勝戦でのフライング、非常識なフライングが再訓練の対象でしたが、ルール改正で非常識なフライングは除外されることになりました。
スタート事故を起こした選手は次から慎重になってしまうので、次走のレースでは早いスタートを切りづらくなるよ!
フライングした際の舟券・オッズはどうなるのか
レースでフライングをすると選手は欠場扱いになり、その艇絡みの舟券は全て返還になります。残りの5艇のレースとして計算をし直すことになるため、オッズは変動してしまいます。
更にフライングをした選手が何人もいるとレースそのものが不成立になったり、舟券の種類によっては不成立になってしまうものも出てしまいます。
もう少し詳しく解説するね!
フライングした選手の舟券は返還される
フライングした選手はフライング欠場と言うことになり、その選手がらみの舟券は全て払い戻しになります。
ただし、反則や転覆などで失格になった場合は、本人の責任でなくても舟券の払い戻しはありません。ですから、フライングはスタート前の欠場、そのほかの失格はスタート後の事故という認識になるので返還はないのです。
オッズが変動する
フライングした選手は欠場扱いになるので、残りの5艇でレースを競い合うということになります。そのため当然オッズは変動します。
払戻のお金を除いた残りの舟券を種別ごとに計算し直し、配当金が発表されます。的中しても多くの舟券の払い戻しがあるため、配当金は少なくなってしまいます。フライングしたのが2艇、3艇、4艇となると舟券が不成立になるケースも出てくるので、これらも全て返還になります。
3艇がフライングした際はレース不成立となる
フライングが2艇までは全ての舟券が成立しますが、3艇以上になると不成立な舟券が発生します。例えば3艇がフライングした場合、3連複の舟券は当たりが1種類になってしまうため、不成立になってしまいます。
5艇がフライングした場合は、最後に残った単勝舟券も当たりが1種類になってしまうため不成立になり、レースそのものが不成立になります。ただし、1艇だけゴールした選手は1着扱いになり、選手の予選ポイントは付きます。
フライングした選手のレースの影響や心情
フライングをしてしまった選手は、いくらそれまでに予選ポイントを稼いでいても賞典除外になるため、準優戦や優勝戦に出ることはありません。
非常識なフライングをしてもルール改正によって即日帰郷は無くなりましたが、選手のモチベーションは確実に下がります。その節だけでなく、その後にはフライング休みが待っていますし、事故点が増え、F1、F2の印が着くのでレースがやりにくくなります。
フライングを競艇予想に活かす方法やポイント
競艇選手がフライングをするかどうかを予想することはできませんが、すでにフライングをしているF1やF2の選手がいる場合は舟券予想に活かすことができます。
上記の3つのポイントを解説いたします。
F1の選手をどのように見極めるか
F1持ちの選手の中には2回目はしたくないと思い慎重にレースをする者と、F2までは大丈夫といってガンガン攻めてくる選手の2種類がいます。
それはフライングしてからの前3節のタイムを見ると分かります。気にしていない選手はタイムが変わらないので、F1でも他の選手と同様に予想ができますが、慎重になっている選手がアウトに入った時などは、思い切ったスタートを切れないケースもあるので、予想の軸にしない方がいいでしょう。
F2選手の取捨選択
いくらスタートが上手い選手でもF2の場合は狙わない方が賢明です。
フライングを3回してしまうとF2の約2倍(195日間)のフライング休みが課せられる上、確実にB2に降格されてしまいます。そのため、それだけは避けたいという気持ちが強くなるため慎重になるはずです。
また、出走表にはFの表示がなくても休みを全て消化していない隠れフライング選手がいることも覚えておきましょう。5月、11月のリセット時でも未消化選手はF1と同様です。
隠れフライングは競艇日和で確認することができます。競艇選手の情報欄に「未消化」という欄があります。未消化の欄で数字が1などになっている場合は、未消化の該当選手ということになります。
スタート展示でのフライングは気にしないこと
スタート展示でフライングをする選手がよくいますが、それはモーターを起動するタイミングや性能を試しているためで、あまり気にする必要性はなりでしょう。本番ではタイミングを合わせて、しっかりスタートを決めてくることが多く、狙いを下げてしまうと失敗します。
過去にフライングで莫大な返還額になったレース5選【動画あり】
フライングは一つの節で必ず何度か起こる事故ですが、一般戦ならばさほど大きな返還金額になりませんが、それがビッグレースの決勝戦ともなると金額が莫大になります。
特に何艇も絡むような事故になると深刻です。そこで、今までにあった巨額な返還金額になったレースのトップ5をご紹介しましょう。
【返還額24億】2002年6月優勝戦「第12回グランドチャンピオン決定戦競走」
フライングだけを対象にするとこのレースが史上最大の返還額になったレースです。フライングをしたのは2艇でしたが、SGのグランドチャンピオン決定戦の優勝戦なので、大きな返還額になってしまいました。
フライングをしたのは断トツ1番人気の1号艇・西島義則、そして2号艇の熊谷直樹だったので、発売総額26億2427万2400円のうち、92.79%に当たる24億3513万3800円が返還、残ったのは僅かに1億8913万8600円でした。
優勝したのは3号艇の今垣光太郎、2着は5号艇の濱野谷憲吾、3着は6号艇の伊藤誠二、4着は4号艇の高濱芳久でした。
【返還額19億】1989年5月優勝戦「第16回笹川賞競争」
今はボートレースオールスターと呼ばれているレース。SGの5大競争の一つで、出場者はファン投票で選ばれます。このレースも1号艇、2号艇の2艇がフライングするという大波乱が起きてしまいました。
返還額は当時の歴代2位の19億3514万3500円で、返還率は69.4%でした。今と違いフライングの判定が遅く、2周目の1マークを超えたあたりでコールされるので、ファンはがっかりするかもしれませんね。
レースは1コース2号艇の荘林幸輝と4コース1号艇の西田靖のフライング、まくり差しを決めた3号艇の黒明良光が優勝しました。2着は5号艇の角川政志、1着は6号艇の上船俊一でした。
【返還額17億】2007年3月優勝戦「第42回総理大臣杯競走」
予選をトップ通過して準優戦でも1着になり、断然の1番人気だった1号艇の植木通彦がまさかのフライング。大波乱のレースになってしまった平和島で行われた総理大臣杯の決勝レースです。
僅か0.1秒のフライングで、0.0秒のスタートを決めた地元3号艇の濱野谷憲吾が恵まれで優勝しました。レースはイン逃げを決めた植木が向こう正面で完全に抜けだし、独走状態だった時に1号艇フライングのコール。
地元浜野谷を応援するファンからは大声援が起こりましたが、がっかりしたファンが多かったのは確かです。17億4522万7700円という莫大な額の売上金が返還されました。2着は2号艇の吉田弘文、3着は4号艇の瓜生正義でした。
【返還額13億】2022年8月優勝戦「第68回ボートレースメモリアル」
浜名湖で開催された「第68回ボートレースメモリアル」は2艇がフライングという波乱の中、6号艇の片岡雅裕が優勝したレースです。
フライングしたのは3号艇の新田雄史と4号艇の白井英治で、フライングがなければ新田のまくりが決まったレースでした。
片岡選手は6コースからインを差して恵まれでしたが優勝することが出来ました。このフライングで総売上げ16億5895万8800円のうち13億4993万3200円が返還。2着は5号艇の山口剛、3着は1号艇の菊地孝平でした。
【返還額41億】2021年12月優勝戦「第36回グランプリ」
厳密にはフライングが原因ではありませんが、暮れの「賞金王決定戦」の優勝戦で起こったアクシデントですから返還額が史上最高金額になってしまいました。払い戻しをするファンの長蛇の列が住之江の駅まで続いたという逸話が残っています。アクシデントは1マークで起こりました。
まとめ
競艇ではフライングは重大な事故扱いになります。それは、ファンの掛け金が返還になってしまうため、その分売り上げが減り、主催者にとっても大きな損失になるからです。
選手にとってもフライングをすると即日帰郷という重い処分は無くなりましたが、決勝戦に進めないばかりか、一定の期間レースへ斡旋されないフライング休みやグレードレースに出られないペナルティが課せられます。
長期間レースに出られないとB2に降級されてしまう危機に晒されます。ただし、フライング休みをきちんと消化していれば5月と11月には今までのフライングはリセットされ、F0から始められます。
そのことを十分頭に入れてレースのF1、F2の選手をどう予想に反映させるかを考えて舟券予想に活かすといいでしょう。